スイカと交換日記

Date
2006-08-15 (火)
Category
今日の逸品

今年も実家の母から羽後町産のスイカが大量に届いた。今さらではあるが羽後町のスイカは大きさも味も申し分ない。子供の頃、祖母が大事に育てていたスイカを従兄たちは持ち去り、問い詰められると決まって私をスイカ泥棒にしていた。孫たちの中で最年少の私なら何をやっても祖母が許してくれることを知っていたからだ。スイカに限ったことではなく花泥棒に野菜泥棒の汚名まで……今おもえばヒドイ話である。
それはともかく、かつて羽後町で農業をしている女性を取材したことがあった。偶然目にしたNHKの番組で長年交換日記を続けている農家の女性たちが紹介されていたのだが、その中の一人が羽後町にいると知ってすぐに連絡をとった。交換日記のメンバーは全国各地で農業を営んでいて、遠くはブラジルのコーヒー豆農家もいた。天候に左右される農業は苦労が絶えることなく、その辛さや時々の喜びを記した一冊の大学ノートは山を越え、海を渡り、それぞれの手から手へと何年も回り続けたのである。
話すほうも聞くほうも涙がこぼれ落ち、7月の暑い日ざしに汗も流れた。とその時、半月形に切られた真っ赤なスイカが差し出された。午前中に畑からとってきたのだと言う。あんなに甘いスイカは過去にも、そしてその後も味わったことがない。涙の塩加減が良かったのか、いや、農家がどれほど苦労して作物を育てているかを知ったからかもしれない。

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