幕間の天井桟敷

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新着情報

手繰り寄せスイーツ

Date
2007-06-18 (月)
Category
今日の逸品

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今や、巷で評判の商品は全国中から取り寄せられる時代だが、身近にもスゴイ逸品はある。秋田市広面の大学病院前にある洋菓子店「多恵&要蔵」の「苺チーズプディング」(399円税込)がそれで、チーズ好きにはたまらないコクと重量感たっぷりの手ごたえに感動することは間違いない。この下手な写真とシンプルな見た目に油断してはならない。キャラメル風味のさくさくパイ生地の上に薄いスポンジ、苺ジャムをはさんでカスタードプディング、その上に濃厚なクリームチーズの生地、その生地に甘く煮た苺がごろごろ乗って焼かれ、上品なゼリーが寄せられている…どーよ!と半強制的に友人に食べさせ、ワクワクしながら感想を待った。
「うんうん、美味しい。え…、すごっ、すごい美味しい! おおーっ、美味しい何コレ!?」
完璧に予想通りの答えに大満足。

アサリのあくび

Date
2007-06-11 (月)
Category
今日の逸品

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昨夜から塩水に浸しているアサリが元気だ。間もなく熱湯に放り込まれて味噌汁の具になる運命とは知らずに、呑気にあくびなんかしている。でもこうやってニョキニョキ顔を出しているのを見ると、妙な親近感が生まれて「おはよう」なんて声をかけてしまうのが人で、お椀に盛られたら躊躇しないで食べてしまうのも人なのだ。
こんな時、「(あなたの命を)いただきます」という言葉はよくできたものだと思う。
昨日、パイレーツでメジャーデビューを果たした桑田投手の言葉に膝を打った。彼はこう言ったのだ。「人生はいいことばかりじゃないけれど、自分なりにプラスに変えていけばいいと思う。」
アサリさん、あなたたちの人生はどうだったか知らないけれど、最期にほら、近ごろ肝臓が弱りめの人間を救えたではないか。こういうことを言うからバブル世代は自己チューだと叩かれるんだけどね。

後輩の「Step By Step」

Date
2007-05-29 (火)
Category
今日の逸品

5月25日、本荘のビルヘンで、画家・佐藤耽泥(たんでい)氏の13回忌に合わせて「風のパーティー」が開かれた。本荘市(現・由利本荘市)出身の耽泥氏は帰郷の際、埼玉出身の妻・初美さんにこう言った。
「本荘は鳥海山という素晴らしい山が間近に見えるんだ。この山は活火山だが噴火は絶対しない。海岸沿いの街だから雪の心配もいらないぞ」
ところが帰郷した1973(昭和48)年の本荘は記録的な大豪雪に見舞われ、翌1974(昭和49)年に鳥海山はナント173年ぶりに噴火した。ある意味、逆予言である。慣れない雪かきに悪戦苦闘の初美さんは思った。
「最初に最悪を経験するって良いわあ」
それから20年後、アートコミュニケーションホール「ビルヘン」と、そこに集まる大勢の仲間たちを残して耽泥氏は逝ってしまったわけだが、私は残念ながらビルヘンの壁にかけてある遺影でしかお目にかかったことがない。同様の若手と、実際に故人と酒を酌みかわし、芸術と音楽と文学そして浮世のあれこれを語り合った方々が集まった。 
その中に若きジャズトランペット奏者の佐々木大輔氏も加わって、「枯葉」「A列車で行こう」「聖者の行進」など数曲を披露してくれた。このほど初の自主制作CD「Step By Step」を発売したばかりだという。居合わせたオジサン、オバサンたちは、由利本荘市出身の子は他人の子でも自分の子、母校が違っても我が後輩、年齢は離れていてもオトモダチ、という具合に、こぞって彼のデビューアルバムを買わせてもらったのである。今どき夢を描けるなんて稀有な若者だ、応援してやろうじゃないか、と遺影の耽泥氏が笑ったような…。2007_0526佐々木大輔CD0019.JPG 
↑ジャケットに私の名前入りでサインしてもらったため、開いた状態でアップ

粋な…

Date
2007-05-12 (土)
Category
今日の逸品

料理上手のよしこちゃんが塗りの重箱のふたを開けた瞬間、一同から歓声があがった。つややかな椿の葉をあしらって、色鮮やかにおいなりさんが並べられている。ところが味付けした“うす揚げ”に詰められているのは酢飯ではなく、茹でた蕎麦と菜の花というから何とも粋ではないか。花見の主役は桜からツツジへと移っても、それに乗じて集まる顔ぶれは変わらない。こうして仲良く、そして何年後かにはせめて粋な姥桜でありたいものだ。手前の小鉢は”ばっけみそ”やワラビのおひたし.jpg

すべてはこの一滴から

Date
2007-04-25 (水)
Category
今日の逸品

今年ではないが、ある冬の日のこと。実家の母が仕込んだ「どぶろく」をペットボトルに詰めて自宅に持ち帰り、冷蔵庫に保管していたことがあった。数日後、そろそろ今夜あたり飲んでみようと冷蔵庫から取り出してみた。【暖房の効いた室内】【密閉容器】【発酵飲料】となれば、察しのいい方なら予想がつくと思うが、そう、それ、たぶん当たり。幸運だったのは流し台の真上で開栓したことぐらいだろうか。
ペットボトルの口からシュワッとかすかな音が聞こえたかと思った瞬間、白い液体は天井めがけ恐ろしい勢いで噴出した。私はといえば噴き上がる“とっておき”を呆然と見ているだけで、左手に持っていたペットボトルは1分もかからず空になった。その大部分は排水溝へと流れ、他は流し台のカウンターに置いてあった観葉植物が呑んだ。
杜氏修業までしたことがあるやじ子は、日本酒が盃からこぼれると杜氏の苦労を思いやって「酒の一滴は血の一滴!」とよく言っていたが、血の一滴どころか、これではまるで大流血事件である。
そういえば能代の喜久水酒造で造っている「一時(いっとき)」は、危険なお酒というサブネームを持っていて開栓する際の注意書きが添えられていたはずだ。飲み手たちも畳にむざむざ呑ませてなるものかと真剣に開ける。こちらは本物の杜氏が、それこそ血をにじませる思いで造った逸品だから当然だろう。
―すべてはこの一滴から―
と、小舎で発行(発酵)した「耳を澄ましてごらん」の裏表紙にも書いてあるように、これを読んでくれている皆様たちの流す一滴の汗、涙、苦労も「血の一滴」としてちゃんと大事に受け止めてくれてる人がいると思うんだな。

チェリーさんのげんこつ

Date
2007-04-16 (月)
Category
今日の逸品

「美味しいんだけど男性客ばっかりだから女一人じゃ行きづらい」というヤジ子に誘われて、ホルモン煮込みの店に女二人で行ってみた。その名も「げんこつ」。コの字型のカウンターだけの店内は、壁の色といい店主のチェリーさんの渋さといい、なかなかの年季の入りようだ。平日は仕事帰りのサラリーマンたちで賑わい、座る席がなければ立ったままで焼酎なんかを飲んでいくそうだが、さすがに土曜の夜ともなれば客層はさまざまで程よい混み具合。
やがて一人の客が、柔らかく煮込んだホルモンの盛られた鍋を抱えて外に出て行った。聞けば鍋を持参すればテイクアウトも出来るんだそうだ。子供の頃に小さなボウルを持って豆腐屋さんに走らされたことを思い出す。何だか昭和という時代に出会えそうな店なのだ。サッパリ味の煮込みに数種類の串焼きと、花冷えの夜にピッタリの熱燗を注文した。
「アチチ…、うーん…沁みるぅ~!」
こういう美味しい場所って男性たちが隠してるんだよね。

こうでなくっちゃ

Date
2007-04-13 (金)
Category
今日の逸品

年が明けて稀代の暖冬も過ぎた。いよいよ北東北にも桜の便りが届く季節が巡ってきたということは、あらら…4ヶ月も幕間だったんだ、ひどいね(笑)。
少し前になるが、3月25日に「地球ぼうえい隊」というNPOが主催した出版記念パーティに出席した。小舎で発行した「耳を澄ましてごらん」の著者、小野田セツ子さんを囲むアットホームなパーティで、会場は秋田市御野場にある「木漏れ日のテラス」というパン主体のレストラン。友人たちによるフォルクローレやユーミン、ビートルズのスタンダードが演奏されて雰囲気を盛り上げる中、焼きたての香ばしいパンや具材たっぷりのサンドイッチ、サラダ、ケーキが彩りよく並ぶ。美味しい食べ物と音楽そして会話が揃うと、女性というのは本当に幸せそうな笑顔になるものだ。2個目のケーキをまさに口にしようとしている女性と目が合った。彼女は一瞬恥ずかしそうに笑ったが、そのブルーベリーのムースをパクッと食べるやいなや極上の笑顔に輝いた。いいなあ、食べるというのはこうでなくっちゃいけない。パーティも終盤になって、残ったパンやケーキはお持ち帰りくださいと箱や袋が配られた。中央のテーブルには山のように焼きたてのパンが追加で並べられている。知人や仕事の関係者たちと挨拶をかねて10分ほど話し込み、さて、どのパンをいただこうかなと後ろを振り返って絶句した。さっきまであんなに残っていたパンもケーキもすっかり消えていたのだ。やがて会場を後にする幸せそうな笑顔、笑顔。その彼女たちが大事そうに抱えているのは、はちきれそうに膨らんだ紙袋。いいなあ、お持ち帰りというのはこうでなくっちゃいけない。肩を落とす私にそっと小さな紙袋が差し出され、中をのぞくと1辺が2センチほどの小さなミルクパンが8個入っていた。ほんのり甘くて懐かしいミルクパン、どなたか分からないけど感謝感謝。


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