2006年10月

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秋鮭の運命

Date
2006-10-16 (月)
Category
今日の逸品

スーパーにはお惣菜コーナーという場所があって、多種多様に調理された品々が小分けで販売されている。メニューに迷った日はそこを覗いて参考にすることがあって、昨夕、目に留まったのは「秋鮭のチーズ焼き」という品だった。秋鮭は今が旬らしく、値段も安いし脂が乗っていて美味しいものだ。
さてオーブンの余熱をセットして、秋鮭の骨を抜いてタマネギとシメジを切る。天板にアルミホイルを敷いて材料を並べたら塩コショウとガーリックパウダーなどの手持ちの調味料を振り掛ける。そして白ワイン!…が切れていたので日本酒で代用、最後にとろけるチーズを!…これも切れている(朝までは確かにあったのに)。チーズがなかったら秋鮭のチーズ焼きにならないではないか、マズイ…、冷蔵庫に頭を突っ込んだまま何か手はないかと考えた。
雑誌の編集作業では欲しい写真が入手できなかったり、必要な原稿が間に合わなかったりと「切らす」ことが結構多い。だが、そこに固執していると作業は先に進まないので、最高の代用品はないかと瞬時に頭を切り替えなければならない。
突っ込んだ頭を冷蔵庫から抜いた時に、私が握っていたのはマヨネーズ。並べた秋鮭の上に、網目を作るように縦横にマヨネーズを細く搾り出して、余熱の終わったオーブン250度で10分。マヨネーズが黄金色に焼き色がついたのを確認して、大皿に移して「みず菜」のグリーンを散らして食卓へ。かくして、秋鮭の運命はチーズが切れていたことで好転した。人間の運命にも、きっと同じような幸運が隠れているのだ、と思えば本日も楽しい。

胃のなかのカメラ、大事を映さず

Date
2006-10-15 (日)
Category
今日の逸品

次女は14歳にして胃の内視鏡検査を受けた。未だ経験していない私が、よく聞くところの「苦しい」だの「人には見せられない姿」だのと言って、いたずらに恐怖心を植えつけてもいけないので「胃カメラ? それはそれは…」と茶化す程度にしていた。検査を終えて帰る車中で本人いわく「超小型カメラを飲み込んで、遠隔操作をして余裕で画面を見て楽しめるものとばかり思っていたのに、ナニアレ! 太っ! でかっ!!」(映画の見すぎじゃないかと思うが)。それはともかく、この決して楽ではなさそうな検査を受ける必要性があるのかという当初からの疑念が消えない。数週間前は虫垂炎という所見で点滴と投薬の治療を受けたばかりだ。医療を提供する側の経営の安定化や医療ミスをめぐる防衛という意識は分からないでもないが、安直であったり過剰であっては困る。一般的な患者は指示された医療行為を拒否できないし、拒否する根拠も持っていない。「患者さま」本位の医療というわりに、電子カルテの入力に診療時間の多くを割いて患者の顔を見ないのもどうかと思う。
何はともあれ、鵜のごとく一仕事終えた次女は、鮎ではなく「肉じゃが食べたい!」と夕食のリクエストをした。

苦手意識

Date
2006-10-11 (水)
Category
今日の逸品

長い長いトンネルをやっと抜けたような気分だ。天気の具合を見る余裕も出てきたことで人心地ついたと実感する。振り返れば2週間ぶりの「今日の逸品」で、その間には久しぶりの「煌」で大将の顔を拝んだ日もあった。あんまりご無沙汰していたせいか、なんとお造り盛り合わせの皿にエビが居た。エビは好物だが、刺身となると甘すぎて食指がのびない。そのことを知っている大将は、いつも別の品に替えてくれていたのだ。残すのも大人げないので食べたが、これは昨日の夕食の前振りだったのかもしれない。
昨夜、実家から届いた大量のボタンエビ、ホタテ貝柱、イクラを前に、しばし腕組みして考えた。さすがに半分は刺身に、あとは唐揚げとバター焼き、刺身にしたボタンエビの頭はお吸い物のダシにと振り分けてみた。たった3種類の食材なのに皿数だけは多くて、手のかからない豪華な食卓となったのは有難かった。
父もエビとホタテ、カニの刺身を好まず、よくそのことを口にしていたから、子供だった私は「あの甘さがなあ」という言葉に感化されたのかもしれない。そんなこともあって、子供たちの前では好き嫌いを口にしないで過ごしてきたが、成長するにしたがって常に私の皿にだけニンジンが入っていないということはバレた。思えば「親業」ほど苦手なものはないかもしれない。

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