2006年12月

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遅めの夕食はサバイバル

Date
2006-12-28 (木)
Category
今日の逸品

正月も近いということで、昨夜は冷蔵庫の余りものを手当たり次第に使った。水切りして3センチ四方の正方形に切った木綿豆腐に粉をつけて揚げたら、すりおろしたショウガと豆腐が隠れるくらいにたっぷりと長ネギのみじん切りをのせて天つゆをかけて揚げ出し豆腐の完成。長ネギは小口じゃなくて、みじん切りにしたほうが美味しい。ついでに揚げた大学イモとシイタケの天ぷら、さらにはチャーシューを作った時の煮汁をスープにしたラーメン(一人分しかなくて取り合いの様子)を出来た順に運んでもらう。最後に子持ちカレイの煮付けを盛り付けて私もいざ食卓へ…無い! 揚げ出し豆腐も大学イモもシイタケの天ぷらも手作りラーメンも何も残ってない! 時計を見たら9時。なるほど、8時に帰宅した私が悪うございました。ふふん、こんなこともあろうかと大学イモだけは翌日のお弁当用に少し寄せておいたのだ、とほくそ笑む自分が哀しい。

やじ子の腕前

Date
2006-12-27 (水)
Category
今日の逸品

漫画は滅多に見ないのに、ひょんなことからハマッてしまった「のだめカンタービレ」。その15巻を持って帰宅途中にやじ子のマンションを訪ねた。ドラマ好きの彼女はテレビから「のだめ…」に入り込んだらしいが、印刷物には映像では表現しきれない楽しさがあるものだ。さて、やじ子宅。テーブルの上には焼いたハタハタ、そして小鉢に盛られた“もつ煮”が二人分ずつ並べられている。空腹を覚える頃合とはいえ、ことこと半日かけて煮たという“もつ”は臭みも抜けて柔らかく味もよく沁みて実に美味しかった。やじ子は一見すると包丁も握ったことがないように見えるが、実は調理師免許を持っているのだ。容貌も話術も優れているから小料理屋でも開けば繁昌するに違いない。と、そそのかしているのだが、なかなか腰を上げようとしないから困ったものだ。だが失敗作も半端ではない。たとえばマーボー豆腐事件。以下は彼女が作ったマーボー豆腐を一口食べた私のセリフから始まる。
「し、しびれる~。毒盛ったでしょ!」
「失礼な、毒なんて盛ってないわよ! (一口食べて)げっ、何これ…ホントにしびれる~!」
「ほらね。ああ、歯医者で麻酔を打たれたみたいにビリビリする」
「恐ろしくて味見してなかったんだけどさ、最後の仕上げで山椒の粉を一振りしようとしたら、蓋が開いてドバッと大量に…。いやあ、山椒って熱を加えるとしびれるのねー」
考えようによっては、しびれる料理屋っていうのも話題にはなりそうだ。

聖夜に、あつあつパイシチュー

Date
2006-12-26 (火)
Category
今日の逸品

例年のクリスマスイブは仕事を終えてからが勝負で、雪と渋滞の道をひた走りながら「あれを買って、これを買って、あれを作って、これを用意して」と車の中でぶつぶつ呟いていた。今年は日曜にあたった上、暖冬で積雪ゼロだから実に助かった。まあ、若いカップルならロマンチックなホワイトクリスマスが望ましかっただろうが、近頃の私はロマンより効率に軍配が上がる。数年前に同じ職場にいた20代の男性が、イブの一晩だけで彼女のために20万を費やしたことがあると言っていたのを思い出す。日本ハムの監督じゃないが「シンジラレナーイ!」。当時は、プレゼントされたブランド物のバッグをイブの翌日には質草にするという女性たちの呆れた行動が問題になったものだ。
それはともかくとして今年の「おうちディナー」は、ホタテのクリームシチューを入れた耐熱皿にパイ生地をかぶせて焼いた「あつあつパイシチュー」をメインにした。ふんわり膨らんだパイ生地は真上からざくざくとスプーンで割って、シチューの中に落として食べる。パイで覆われていたシチューは予想外に熱く、それを頬張る長女の顔はまるでピノキオがロバに変身する過程を見るようだ。「彼氏には見せられない顔だよ」と忠告してあげたのに、「ほんはほ、ひはいほん(訳・そんなの、いないもん)」。あ、鼻が伸びた!

由利牛のみそ漬

Date
2006-12-22 (金)
Category
今日の逸品

昨夜はさすがに消化器系がお疲れモードで、いつもの質素な食事を作ろうと台所に立ったのだが階下の義母から由利牛のみそ漬が差し入れられた。ステーキ用の鉄板が肉の脂と味噌を焼いて、香ばしくジュージューと音を立てている。まずい…いや美味しいのだけどマズイ。問題はここからなのだ。本当に美味しかったので、同じものを友人にも贈ってあげようとネットで検索してみた。見つけたまでは良かったが、支払方法が代引のみに設定されている。それはまずいのだ。支払うのはこちらで、先方には商品だけが届けばよろしい。送料の説明がなかったのは、もっと先に進まなかったからだろうか。画面には産地直送の美味しそうな品が並んでいるのに、絵に描いた餅のように消費者が手を出せないのは一体どうしたことか。JA秋田しんせい農業協同組合は、今日もまた一人客を逃した。

師走の馳走

Date
2006-12-21 (木)
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今日の逸品

深く反省したせいか今日は軽症で済んだ。いくら学習能力が乏しくても、さすがに3日前の失敗は繰り返せない。昨日の忘年会は山王プラザから近所に移転した「やどろく」に始まって、川反の「美杏奈」、そして「蔦」でお仕舞い。やどろくの料理は豪快だが素材が良いので行くたびに印象に残る。たとえば昨日は、厚さ2センチもあるトロや、焼いたら溶けてしまいそうな霜降りの牛刺しが「どうだ!」と言わんばかりに堂々と大皿に盛られていたし、ミディアムに焼かれた巨大なサーロインステーキはハーブ塩でさっぱりといただくのだが、噛むたびに肉汁がほとばしる勢いなのだ。他にズワイガニとふぐちりが参戦して、ごちそうの代名詞のような品だけがずらりと並んだ。素材で勝負…人もこうでなければならないんだろうなあ。とはいえ今さらスッピンで街に繰り出す勇気はないな。

天国と地獄

Date
2006-12-19 (火)
Category
今日の逸品

日曜日、秋田市郊外の蕎麦屋で鴨パーティが催された。ソムリエ弁護士は赤ワイン2本、白ワイン1本、シャンパン1本を持ち込み、フランス乞食医師は太平山の小玉醸造が仕込んだ純米大吟醸「今人(いまじん)」1升を手に、私は久しぶりに焼いたチーズケーキとアップルパイを抱えての集合となった。薄暮の中を小雪が舞い始めた頃、テーブルに据えられた七輪では小又峡の天然鮎が独特の清々しい香りを放っていた。メインディッシュの鴨は通称“ものとりライター”氏が山に出かけての戦利品(と言いたいところだが今年は鴨が少ないらしく知人から分けてもらったらしい)とあって自ら炭火で焼いてくれ、傍らの大鍋には誰かが背負ってきたネギが鴨の旨みを吸ってグツグツと煮えている。そして宴の中盤では、山王「宇多羅」の店主だったカズオさんの蕎麦が振舞われるという逸品だらけの大晩餐会となった。築100年を超える古民家に集まった中年男女9人のグラスは傾きっぱなしで、ついにはカズオさんの寝酒(?)かもしれない新政の本醸造を引っ張り出す始末。
翌日―。44年の人生の中で5本の指に入りそうな二日酔いが待っていた。天国から一夜にして地獄へ。中間の人間に戻れたのはその日の夜という体(てい)たらくで、深~く反省。

さくさくは冬の音

Date
2006-12-16 (土)
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今日の逸品

昨夜届いたハタハタのおすそ分けで、今朝早くに近所のよしこちゃんを訪ねた。その数分前に私からのメールを受け取っていた彼女はビール漬けを手にして玄関に現れ、「今、樽から出したばっかりよ」と満面の笑顔で言った。すっぴんの女ふたりが魚と漬物を交換する朝の光景なんて、まるで時代劇に出てくる長屋のようではないか。わらしべ長者とはいかないが気分は上々で、過保護犬・銀士の散歩を終えてから早速ビール漬けで朝食とした。いつもながら絶品の味わいで、さくさくという瑞々しい歯ごたえが心地いい。
ずいぶん昔になるが、冬の夜に「さくさく行こう」と言われた時に、雪を踏みしめる音のことを言っているのかと勘違いしたことがあった。あとで「さっさと歩く」というような意味で言ったのだと知ったが、なぜか「さくさく」という言葉は冬を連想させる。
仕事を済ませたら、さくさく帰って今朝、仕込んできたヒレカツを揚げよう。

図らずもダイエット的生活

Date
2006-12-15 (金)
Category
今日の逸品

昨日、二人の知人から天井桟敷の幕間が長すぎると指摘があった。一人は千葉に住む友人から生死の問い合わせ、もう一人は仲良しの美人秘書で「毎日ストーカーのごとく覗いているのに…」と苦笑まじり。誠に面目ない。ちょっと言い訳がましいが、この2ヶ月というもの寝食を忘れるほど締め切りに追われていた。新刊「おんなたちの満州」は太平洋戦争開戦の12月8日発行を目指して急いでいたのに、その校正用の赤ペンを持つ手が突然、記念誌の原稿やフォーラムの後始末記を打つ手に変わるのだからややこしい。そうこうしているうちに体重は4キロ減って、ロングブーツのファスナーもすんなり上がるようになっていた。得意げに友人にメールで報告したら、筋肉量を増やさなければリバウンドは必至と冷静な返信があった。忘年会、クリスマス、新年会が控えていることを思えば、世の中、結局は丸くおさまるように出来ているのだろう。桟敷復帰を記念するように今夜は漁港直送のハタハタが届いているはずだ。焼きたての身から中骨をすっと外したら醤油をたらしてかぶりつく。いいんだろうか…垂涎の幕が開く。

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